違和感









たとえば嫌になるくらい自分が、君と重なっていることを知る。
僕という人間と君という人間がまるでコピーであるかのように。
重ねて、
透かして見て、
ほんとうに同じだったら。


そんなことはないとわかっていても
いい気持ちはしないんだ。


こわい、
とも思う。


僕が感じること、僕が考えること、
笑ったり腹を立てたり
悩んだり絶望したり
同じものに同じ反応をしてしまった時。


僕が君に近づかないのも
君が僕を見ようとしないのも
きっと、同じ理由なんだろう。


そんなことは嫌だと頭から否定しても否定しきれない、
それほどに、僕らは重なってしまう。


――そっくりで

――同じで

――だから反発しあう


僕と君は
どちらか1人がいれば事足りた…?



でも


ほんとうに同じなのなら、
この違和感はなんだろう。


そっくりそのまま重なっているのなら
この違和感は…


人と人との間にある違和感はいつでも間違いなく「愛」なのだと


僕が唐突に思いついたとき。
君の視線を感じて顔を上げると君は怒ったように目をそらした。


君も知っているんだ。
そっくりな僕たちが、それでもこの違和感をかかえてここにいることを。


僕は自分が嫌いなのか君が嫌いなのかわからない。
自分が好きなのか君が好きなのかわからない。


僕らの間の、この痛いほどの違和感のおかげで。