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「やあ、ここにいたのか」
部屋に入ってきた三杉が近づいてきたので岬は結界モードに入る。
「いちゃ悪い?」
ホテルの自室でパソコンに向かっていた岬の前まで来ると三杉はすっと顔を近づけて言った。
「愛してるよ、岬くん」
その三杉を岬はキッと睨みつけた。
「なんなの、ケンカ売ってんの!」
「どうかな」
ニコッと微笑んだまま三杉は動じない。それにイラッとする岬。
「君のそういうとこ、大嫌い」
「み……」
答えようとした三杉の言葉を完全シャットアウトしたのは岬のキスだった。
「ケンカのときにニヤニヤしないっ!」
即座に唇を離して真正面からダメ出しをする。一瞬目を丸くした三杉は、しかしその言葉に破顔してしまった。
「またそれ!」
「……ふふ、嬉しいんだから、笑うのは止められないよ?」
「だからそこは嬉しがるとこじゃないって言ってるの!」
「君が僕を甘やかすからだよ」
と言い終わるより前にぽふっ、と顔に当たったのは投げつけられた枕だった。
「そこまでケンカを売りたいなら覚悟はしてるんだよね?」
ぬかりなくキャッチした枕越しに三杉が見たのは枕をもう一つ握って今にも投げる体勢の岬だった。
「もちろん受けて立つよ、岬くん」
プライベートルームに二人きりでのケンカがどうなったのか、知る者はない。幸福なことに。
END
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